この記事では主に,currying(カリー化)という操作を通して,いくつかの数学的対象を捉え直す。
最近,『加群とホモロジー代数入門』(松田茂樹・著,森北出版,2024)を買ってみた。そこで,改めて加群の定義を見直したが,よくされる次の定義があまり直感的でないと感じた:
本によると現代数学は,構成より機能を重視する立場にあるようだが,それにぞぐわないのはもちろんである。そして実際,機能の面が前面に押し出された,もっと(少し難解だが)直感的な定義がある。
定義2の作用を与えることは,$R\to\textrm{Map}(M,N)$を与えることと同値である($M\to N$の対応を,$R$との演算として与えるということで,同値であることは自然に思える)。このように,$(X\times Y)\to Z$を$X\to(Y\to Z)$にする操作をcurrying(カリー化)と呼ぶ。
定義1’ (左A加群,left A-module).
$A$を環とするとき,作用$A\times M\to M$によりアーベル群(M,+)が左$A$加群(left A-module)であるとは,$A\to \mathrm{Map}(M,M)$のImageが$\mathrm{End}(M)$に入り,
$$ A\to\mathrm{End}(M) $$ が$1\mapsto 1$の環準同型となることをいう。
ここで,curryingをより詳しく見てみよう。
例1 (双対空間とcurrying).
線型代数の一般的な記法のもとで議論する(例えば,一般に線型空間は$V$とかく)。 $VとV^{\ast}$は同型なわけだが,curryingの視点からは次のようなことがわかる。双線型形式